《メカ龍》は「矛盾との共存」を象徴している。
7歳の頃、小学一年生の私は、ナイフを持った通り魔にあった。
奇跡的に無傷で助かった私は、その経験から「人はなぜ死ぬのに生きるのか?」という大きな矛盾にぶつかる。
作品のモチーフである《メカ龍》は、西洋近代の象徴である機械と、古代東洋・自然崇拝の象徴である龍が共存している。
《メカ龍》の身体はそれ自体が、矛盾の共存である。
また、薄塗りで隈取る狩野派の技法、箔を装飾的に使う琳派の技法、厚く盛り上げ工芸的に仕上げる院展の技法や、まるでバロック絵画のような描写。技法も薄塗り・厚塗り、金属質・絵具質などの対比を強く描き、モチーフ・技法全てにおいて、矛盾が共存した日本の文化をこの絵画は体現しようとしている。
古くから日本の文化には、ハレとケ、縄文と弥生、わびさびと絢爛豪華な秀吉好みなど、矛盾するものが共存してきた。矛盾を矛盾のまま受け入れ、ゆるやかに出来上がる文化。それこそが日本の文化である。日本画も、古くからの狩野派や土佐派、浮世絵諸派などを統合して絵画化し、温故知新を目指すというフェノロサ、岡倉天心のコンセプトや成立過程は、古き矛盾を共存させて、新しきを生み出す「矛盾の共存」そのままであり、その特質を私の絵画は体現している。
矛盾の共存した中道である日本の文化、《メカ龍》は、明日へと飛び立つ「世界の未来」だ。